Not Quite a Bear Encounter

9月下旬、尾瀬国立公園を歩いた翌日のこと。
19kmを歩いた疲労が抜けず、3時間の帰路の運転もあって、体はすっかり疲れ切っていたため着替えなどの荷物はそのまま車に積みっぱなしにしていた。

朝の7時ごろ。荷物を下ろして家の中で整理中、ザックのポケットに入れていたクマスプレーをテーブルに置いた際、誤って噴射してしまった。安全装置を付けていなかったのが致命的。「ブシュッ!」と赤い液体が勢いよく飛び出す。

慌てて雑巾で拭いたが、数秒もたたないうちに咳が止まらなくなった。息ができず、思わずそのタオルで顔を覆ってしまい、さらにひどいことになった。
すぐに洗面所へ駆け込み、ひたすら流水で顔を洗う。
痛みと刺激に耐えながら、「納期も近いし、編集も進めなきゃだし、メールも返さなきゃ……朝から何やってるんだろう」と思った。

時間が経つにつれて痛みは少しずつ引いた。
もしこれが山小屋やテントの中だったらと思うとぞっとする。
間違いなく、キャンプ場や小屋から追い出されていたに違いない。

以後、クマスプレーの扱いには十分注意しようと、改めて心に誓った朝だった。